年配の方から、
『昔のたまごはおいしかった。それにつけても今のたまごは・・・・・』
という声を耳にします。これは、昔のたまごを知る方には尤もな事で、現在市場に流通しているたまごと、昔のたまごを食べ比べると、形こそ変わりませんが、似て非なるものになっていることが良くわかります。
昔から比べると、たまごを取り巻く環境は大きく変化しています。たまごを低価格で大量に消費者に提供するという美名の元に、大規模な養鶏場からのたまごが消費者市場に大量に流れ込んでいます。規模が大きくなればスケールメリットが出てくるわけであり、経営的にもそちらの方向に進むのが、自然の成り行きでした。
そして当然のごとく、より低価格に、より大量にとの競争が始まりました。生産効率を上げるために、色々な方法が開発され、ウインドレス鶏舎(*)での大量生産方式が現在の主流になっています。これも、たまごを消費者の皆さまに安価に提供する一つの方法であり、全く否定するものではありません。
(*)ウインドレス鶏舎:
窓が全く無く、人工の換気、人工の光線管理(まるで薄暗い工場のよう。)
のもと超高密度飼養…狭い場所に多くの鶏を飼う…が一般的。
しかし、私は、そう考えませんでした。業界の主流の考えに逆らい、異端児と言われながらも、《鶏に対してだれよりも優しく、だれよりも厳しく》をモットーに、たまごのおいしさを追い求めました。
えさの品質を落とす事によるコストダウンを否定し、“人が食べられること”を品質基準として飼料を開発しました。
その15年間の試行錯誤の成果が 『金印』たまご です。
『金印』たまごは、食べた方から『本当においしい』『もうほかのたまごは食べられなくなってしまった。』 などと言っていただけるようになりました。
このおいしさの源泉は、エサにあります。 《経済効率》 の名の下に、生むため以外の要素(実はおいしさの素)を無駄なものとして極限まで排し、安価なエサによってできた、安価なたまごが現在の主流となるたまごです。
しかし、私の基本姿勢は、経済効率優先には背を向けて、あくまでも『自然の摂理』 を最優先にするものでした。
一般的には高価なため使用されない、しかし本来、鶏:いのちにとって必要と思われるあらゆる素材をひとつひとつ検証してゆきました。実際にエサの原料を自分で食べ、品質と安全性を確認しました。
こうして、テーブルエッグとして多くのみなさまにご利用いただくようになりました。
前述のように、『もうほかのたまごは食べられなくなってしまった。』 あるいは、『このたまご、アレルギーが出ないねぇ』などといったお客様の声が毎日聞こえてきます。
金印たまごは、品質と価格のバランスをとることに留意しました。 どんなにおいしくても、手が届かない価格になってしまっては、意味がなくなってしまうからです。そのため、多くのみなさまにご利用いただくことを前提に、価格(コスト)面で意識した部分が少なからずあったのも事実です。
ここでさらに一歩踏み込みました。
『萌味』たまごは、こうしたコストの制約をまったく意識せず、素材の品質、種類、共に必要と思われるものを必要なだけ、自然以上に 《自然の恵み》 を取り込みました。 考えられるあらゆる自然素材を取り込むことに、こだわりました。 このことは、大手企業が開発費をふんだんにかけて私と同じようなことをしようとしても、なかなかマネの出来ないことだと思います。
いってみれば、
私のような小規模農家のたまご職人が生きる道を模索しながらの
私の “思い入れの集大成”、
それが 『萌味』たまご なのです。
たかはしたまごは、先代、先々代と、80年以上続く養鶏農家です。
たまごにこだわるきっかけとなったのは、自分の家で毎日食べるたまごと外で食べるたまごの味が違うことに気がついてからです。
20年前のことでした。
自宅で食べるたまごが当たり前と思っていたのに、他で食べるたまごはおいしくありませんでした。
なぜ? 今から思えば、それが 『萌味』たまご に至る第一歩だったのかもしれません。
とかく、『どうせ家畜が食べるモノだから』ということで品質基準がアマいことが動物飼料の一般なのですが、前述の通り、“人が食べられること”を基準に素材を選びました。ポストハーベストフリー(*)とうもろこしを中心に、かき殻、さんご化石、ターメリック、えごま、アルファルファ、そして純良(水産用)魚粉、その他一般の飼料ではまず使われないと思われる “海の幸”、“山の幸”をふんだんに取り込んだ《究極のこだわり自家調製飼料》です。
(*)通常、収穫後、輸入・使用までの期間に変質しないように農薬を混入しますが、このとうもろこしは特別厳重な流通機器を用い、こうした農薬を使用していません。
地下150m(関東ローム層形成時のものだそうです。)からの地下水をさらにセラミック・磁気フィルターを通し磨き上げた、いのちにやさしい水。つねに新鮮な状態で与えるためニップル方式にしています。 まるで、あかちゃんが授乳するようです。
鶏舎は、夏は暑く、冬は寒く(酷暑、直接の北風は避けますが。)、自然の摂理に逆らわず、太陽光を充分取り入れられるように屋根の開口部を大きく開け、1日に1度は必ず直射日光に浴することが出来るように鶏を配置。また一般によくある、多段式ではなく、きわめて、ゆったりとした一段飼いを実現しています。
おいしいたまごのために放し飼いは必要ないので、放し飼いではありません。
“おいしさ”を決める最大の要件は、私の体験では、放し飼いか、否か、と言うことではなく、環境やエサに “自然の恵み” を充分取込んでいるかどうか、というところにあります。
日本の気候・風土にあった、日本の鶏です。 国産鶏として定評ある、岐阜県の後藤孵卵場が開発した純国産種を使用しています。 現在、市販のほとんどが、外国で品種改良された鶏(たまご)で、国産鶏(たまご)はきわめて入手しにくくなっています。 また、後藤孵卵場では、日本の、生食という食習慣を考慮し、代々の品種改良を通じて、徹底したサルモネラ対策をおこなっております。
もちろんたかたま農場でも。
“あたたかいごはんに生たまごをかけて食べる”という豊かな食文化を持つ日本は生食習慣を持たない外国に比べて、はるかに繊細な感覚が必要でしょう。
ここまで振り返って、困難な場面に、節目々々に、多くの人たちに支えられてきました。これらの人々無くしては、今の 「たかはしたまご」 は、あり得なかっこと、そのことを思うとき、自分の限界を知ると共に、お世話になった多くの人々に万感の感謝を捧げるものです。
★★たまご職人宣言★★
見せかけや言葉だけではない、